身長の低い男性は攻撃的で懲罰的な性格を持つと言われることがあります。
このような傾向を「ナポレオンコンプレックス」や「スモールマンシンドローム」と呼びます。
この効果がサッカーの審判で起こっている可能性はないだろうか?と調べた研究があります。
つまり身長の低い審判ほど懲罰的なのでレッドカードやイエローカードを出す頻度が高いのではないか?という調査です。
イングランドのノーザンブリアン大学のデーン・マキャリックたちのグループが行いました。
調査方法:プレミアリーグを含む61人の審判の裁定をワイスカウト(Wyscout)から抽出
対象となったのはイングランド国内の以下4つのディヴィジョンで審判をしている61人の男性です。
- プレミアリーグ
- EFLチャンピオンシップ
- EFLリーグ1
- EFLリーグ2
正確な表現ではありませんが上から1部~4部となっていると思ってください。
審判の平均身長は176.95cmで年齢は26歳から53歳となっています。
彼らは調査対象となる2017-2018シーズンに平均で26.89試合を裁いています。
試合ごとのレッドカード・イエローカードの枚数は「ワイスカウト(Wyscout)」というサッカーの分析プラットフォームのデータを使用します。
選手のスカウティングなどでも使用されるものです。
結果:身長が低い審判ほどカードを出す
分析の結果ですがまずファウルを出した数については身長との相関はありませんでした。
身長の低い審判のほうがファウルを取りやすいということはなかったのです。
しかしイエローカードとレッドカードについては相関が認められました。
プレミアリーグを除いて身長の低い審判のほうが多くのカードを出す傾向にありました。
EFLリーグ1と2ではこの差がより大きくなりました。
プレミアリーグではレッドカードは身長の高い審判の方が多く出していました。
イエローカードは身長の低い審判の方が多かったです。

※調査ではイエローカード2枚での退場もレッドカードとしてカウントしています。
選手が無意識に嘗めている可能性も
今回の分析では審判の身長とカードの枚数に相関があるという結果になりました。
ただしサンプル数は61人で1シーズンの試合のみが対象となっています。
ですから再現性は不明です。
色々な論文を見た経験から言わせてもらえば結果がひっくり返ったとしても特に驚きはしないです。
その上でなぜ今回このような分析結果が出たのか心理学的に説明するとすればナポレオンコンプレックスの影響があるのかもしれません。
今回参考にした論文の結果もそのような内容でまとめています。
他の理由としては選手が背の低い審判のことを無意識に嘗めているため統制が取れ難くなっているという可能性も示唆されています。
また身長の低い審判の嘗められないようにという態度が高圧的になり選手を余計にエキサイトさせるという負の相乗効果もあるかもしれません。
日本のJリーグで同じ調査をしたらどうなるのか興味深いところではあります。
参考文献:Dane McCarrick, et al. (2020). Referee height influences decision making in British football leagues.