ニューヨーク司法試験委員会のウェブサイトに過去問のサンプルがありました。
どんな問題が出るのかその内容を見てみましょう。
法律用語に関する注意
問題の内容に触れる前に注意があります。
私は法律の専門家ではありませんので翻訳の間違いがあるかもしれません。
また日本の法律でもそうですが一般に使われる言葉であっても、法律用語として使う場合には意味が変わる言葉もあります。
たとえば日本語の「善意」という言葉には「良い感情」という意味がありますが、法律用語として使う場合には「知らないこと」という意味になります。
このような用法の違いが英語でもあるかもしれませんので、NY州の弁護士を目指している人が参考にしようと考えてこの記事を読む際には注意してください。
NY州司法試験の分かりやすい解説
ニューヨーク州の司法試験は選択式と記述があるようです。サイトに載っていたのは記述です。
ストーリーを読んでから設問に答えるというスタイルです。
著作権に触れない程度に問題の内容を紹介します。
ストーリー
屋台をやっている女性が食材の仕入れを知り合いの男性にお願いすることにした。
男性は夜勤の仕事をやっていて、それが終わる時間がちょうど市場が開く時間なので都合が良かった。
報酬は20ドルと屋台での利益の10%。
女性が仕入れてほしいものをアドバイスするため最初の数回だけ男性と女性は一緒に市場に行った。
市場内のどこの店から仕入れるかは男性に一任された。
その後は男性が1人で仕入れに行き、自分のクレジットカードで支払いをして、女性の車に届けておくとことに。
女性は仕入れの代金を後から男性に支払う。
男性がやっていたのは野菜の仕入れと、女性の車まで届けて置いておくということだけ。
屋台の料理や接客は一切していない。
そんなある日のこと仕入れに行った男性が間違って車を市場のお店に突っ込んでしまった。
市場の人は男性に賠償を求めた。
しかし男性はお金がなく、保険にも入っていないため、賠償できない。
そこで市場の人は屋台を経営している女性に対して賠償を求めてきた。
設問
【問題】屋台を経営している女性と、事故を起こした男性はビジネス上のパートナーといえるか?
【答え】いえない可能性が高い
【解説】ビジネス上のパートナーと認められるための条件に「事業の利益と損失を共有している」というものがある。男性は利益の10%をもらえるが、屋台が赤字でも男性の負担はない。つまり利益は共有しているが損失は共有していないためパートナーとはいえない可能性が高い。
【問題】仮にパートナーといえる場合、女性は市場の人に対して賠償する責任があるか?
【答え】ある
【解説】パートナーである場合は連帯して責任を負う義務がある。
【問題】男性は女性の従業員といえるか?
【答え】言えない可能性が高い
【解説】女性の指揮命令下にあるとは言えない部分が多いことや、男性が他にも仕事を持っていることなどから従業員とはいえない可能性が高い。
【問題】仮に従業員と認められた場合は女性は市場の人に賠償しなければならないか?
【答え】賠償の必要がある
【解説】女性の雇用の範囲の仕事の中で起こった事故のため、雇い主である女性に責任が生じる
【問題】男性は独立した請負人として女性と契約しているといえるか?
【答え】男性は独立した請負人である可能性が高い
【解説】男性は自分の車を運転し、何を買うかについて裁量権をもって仕入れをし、自分のクレジットカードで払っている。また女性は男性の行動に対してほとんどコントロールをしていなかったことなどから男性は独立した請負人であると考えられる。
【問題】男性が独立した請負人と考えた場合、女性は市場の人に対して、賠償する必要はあるか?
【答え】賠償する必要はない
【解説】基本的にこのケースでは女性は責任を負わないことなっている。負わなければならない例外もあるがそれにも該当しない。
日本人の合格率は高くはない
他の問題もいくつか見ましたが分かりにくい文章は特にありませんでした。
いくつかの専門用語はありましたが、文章自体はセンター試験(大学入学共通テスト)の長文問題のレベルくらいだと思います。
設問自体もそれほどひねっていない気がします。
合格率は70%前後の試験ですが日本人の場合はもっと低くなります。
ここで紹介したようなストーリーを読んでから設問に解答するスタイルの問題では答えだけでなくその理由も記載する必要があります。
また問題数が非常に多いため、英語を母国語としない受験者は時間切れになってしまう可能性が高いのかもしれません。